錫色(すずいろ)の家
日本の伝統的な設えや色彩を纏い、「和」の要素を丁寧に取り入れた現代的なお住まい。リズムと変化のある空間がリビングに開放感を生みだし、植物との共生が暮らしに潤いをもたらしています。回遊性のある家事動線により、毎日が快適になる工夫も取り入れました。
Data
- 所在地
- 埼玉県上尾市
- 敷地面積
- 121.42m²
- 延床面積
- 98.95m²
なだらかで大きな切妻屋根と、造作庇がポイントのファサード。外壁は錫色(すずいろ)を纏い、上品な雰囲気を醸し出しています。流行り廃りに左右されない日本の文化である「和」の要素を組み込み、シンプルなデザインに仕上げました。
日本文化の「和」の要素と現代的でシンプルな形状を組み合わせた造作庇。軒裏材は木目調とし、玄関ドアの木目と色や素材感を合わせる事で、玄関アプローチのアクセントとしています。和の設えである鎖樋をモダンなデザインで用いて、風情を感じる佇まいを演出しました。
造作庇と洗出し仕上げの玄関ポーチ
暖かく帰りを迎える夜の姿
玄関に足を踏み入れると目を惹かれる、「なぐり仕上げ」の式台。職人の粋な美意識が生み出した、日本の伝統的な意匠仕上げです。土間部分は、玄関ポーチと同じ素材を用いた洗出し仕上げで、玄関とポーチの一体感を演出。奥にはシューズインクローゼットを設け、生活感をすっきりと隠しました。
職人技が光る、伝統的な「なぐり仕上げ」の式台
階段手摺やアクリルパネルの腰壁手摺は、手で触る部分を木製で仕上げました。存在感を薄くしたい手摺金具などは、華奢に見せるためにスチール製を用い、手で握る部分は木製にして肌触りが冷たくならないように配慮しています。
天井の色味を段階的に明るくする事で、広がりを強調した2階LDK。キッチンの天井は低く、濃く。ダイニングの天井を1段上げて、色をやや薄く。リビングの天井は高く、白くし、空間の用途ごとに天井の色を分けています。
ダイニングキッチンとリビングの天井高にメリハリをつくる事で、リビングの開放感を一層際立たせています。また、室内に大きめの観葉植物を置いても違和感のない高さを計画。高窓から陽光が差し込み、お施主様のご要望である植物と共生する住まいを叶えました。
リビングの勾配天井は、「和」の要素である化粧垂木を天井に見せています。ラフターロックというオリジナル金物が、屋根の強度を強くし、無粋な火打ち材が無い、スッキリとした美しい勾配天井を実現。また、ソファーの色と壁面の色を揃える事で、家具と建物との一体感を持たせました。
テーブル板のナチュラルカラー、テーブルの脚と腰壁の支柱はスチールのブラックで、色合いと質感を統一。使う箇所ごとに素材や色のトーンを揃える事で、観葉植物の緑と各面のコントラストが美しく、落ち着いた空間を醸成しています。
ダイニングテーブルはオーダーメイドで、通路のスペースを考慮してサイズを決めています。また、壁面の建具は壁の色に合わせて、ブラックやホワイトなど壁面ごとに扉の色を変えました。空間のメリハリと色彩のメリハリをつけ、落ち着きのある空間を演出しています。
キッチンの裏側にウォークインクローゼットを設け、冷蔵庫横の扉からアクセスできる仕様。ウォークインクローゼット→洗面脱衣室へと繋がり、ダイニング背面の扉から回遊が可能となっています。水回りと収納をまとめた、回遊性のあるコンパクトな家事動線が魅力です。
リビングとフラットに繋がるバルコニー
造作洗面台の壁面にタイルシートを採用。タイルシートは天然石と樹脂の複合素材で、シートでありながら天然石のような風合いを楽しめます。洗面カウンター下の収納は、ラタン籠の高さに合わせてちょうどよいサイズに設計。注文住宅だからこそ実現できる、オーダーメイドの設えです。
プライベートな時間を楽しめるバスルーム
Designer
お客様の要望に、その建物を永く使ってもらえるような提案を加えて設計したいと常に思っています。
時代が変わっても色褪せない、次の世代にも愛される住宅が増える、そんな世の中になれば良いなと。