体感すまいパーク柏継承の家

デザイナー　北　伸介

「継承の家」は、「時節の行事を楽しむ」日本の伝統文化を現代のライフスタイルに適した形で実現する住まいである。
日本の伝統的な手法を取り入れ、四季を感じ、日常生活の中に時節の行事を融合し、楽しみながら後世に残していく。四季の移ろいを感じ、情緒溢れる室礼を楽しむ住まい。元来、日本では、四季の移ろいやおもてなしの心を室礼という形で表してきた。
しかし、そういった時節の行事を楽しみながら表す日本文化は失われつつある。日本の気候風土や生活スタイルの中に溶け込み人によって育まれてきた日本文化を、後世に継承し、耐震や環境などの基本性能を有した現代の住まいを残していく事は、社会的使命である。

Award

受賞タイトル

2023年度グッドデザイン賞

Concept

日本の伝統文化を現代のライフスタイルに適した形で実現する住まい

この数十年大地震や気候変動による天災が頻発し、既に老朽化が進む日本家屋にも追い打ちをかけるように襲い掛かっている。耐震改修も中々進まず倒壊・損壊等伝統的な日本家屋が失われている。そして、日本家屋と共に継承されてきた「室礼」という「おもてなしの心」や「時節の行事」を楽しみながら、暮らしを育む日本文化は失われつつある。
日本の気候風土や生活スタイルの中に溶け込み、住まいと人によって育まれてきた日本文化を、後世に継承し、耐震や環境などの基本性能を有した現代の住まいを、後世に残していく事は社会的使命である。
ライフスタイルが住まいのデザインと融合し繋がることで、ひとつひとつの行事や生活習慣、おもてなしの心が継承され、先祖や人・自然への感謝等、それぞれの意味を、自ら考え見出す事に繋がり、自然と後世に継承されてゆく。

デザイナー　北　伸介

審査員評価

日常生活の中に、日本独自の時節の行事を取り入れ、家族のコミュニケーションや、後世に語り継ぐストーリーを誘発することを目標とした住宅。深い軒下空間とゆったりとしたサイズのベンチによる縁側空間、リビングに設けられた椅子座としても床座としても活用することができる掘り込みの空間など、部屋名とは異なるささやかな居場所を家の内外にちりばめることで、家の中でのアクティビティやシーンを増やすことに寄与している。コロナ禍を経て、家での活動を見直す人々のニーズに寄り沿った住宅である。【2023年度グッドデザイン賞】

Gallery

家族のコミュニケーションや、後世に語り継ぐストーリーを誘発する

ポイント１【深い軒】日本の四季に適応し、雨風をしのぎ、日陰をつくる深い軒は、日照を巧みに調整し住環境を整える。２Mを超える軒を、強固な構造体で組み上げ、3D立体解析にて検証。

ポイント２【中間領域・縁側】外と内を曖昧に一体となって繋ぐ縁側は、暮らしに心地よい距離感を生み出し、「集い」と「時節の行事」を演出する。常に生活と四季を繋ぎあわせる場として、時の移ろいを感じ、生活の中に融合させる基点となる。「集いの間」。

ポイント３【和の設え（格子・障子・欄間…）】日本の四季と生活の中で育まれてきた日本家屋特有のデザインである格子・障子・欄間・縁側等、四季を感じ、視線を調整し各々の距離感を、互いに折り合いをつけながら心地よく繋ぐ。その曖昧なつながりは個々の存在を感じ、認め合う心遣いを醸成する。日本の心を継承するデザイン。