落ち着きのある「和」の佇まい。その秘密は屋根にあります。
四季の変化が激しく、雨が多い日本で、屋根は家族や家を守る重要な役割を果たします。低くて深い軒の屋根は、夏の暑さや日差しを遮り、梅雨時期には雨風から家を守ってきました。さらに、シンプルな切妻屋根は落ち着きのある佇まいを演出し、年月を経ても飽きのこない美しさを醸し出します。また、来客を最初にもてなす玄関アプローチも、佇まいを語る上で大切です。元々日本の玄関アプローチは、あえて蛇行した動線と、さりげない植栽を配して、ゆとりある空間を創り出してきました。このような日本の伝統的な手法が、落ち着きのある大人の佇まいを実現し、心和む暮らしをさりげなく演出します。

日本人は元来、自然を暮らしの中に取り込むことに長けていました。
コの字型やL字型の間取りは、限られた敷地の中で、適度に光を取り入れ、淡い光で部屋を包み込みます。そのゾーニングによりもたらされる外部空間を、坪庭や中庭として部屋の中に取り込み四季を愛でる。隣地や立地条件に左右されること無く、いつでも豊かな光をもたらし、開放感と家族の気配を感じる。
それを実現する大切な3つの要素が「透ける」「兼ねる」「抜ける」です。
「透ける」素材…格子、障子。
「兼ねる」空間…多目的空間、可変間仕切り。
「抜ける」空間…坪庭、吹抜け。
これらすべての相乗効果により殺伐とした現代に求められている「和み」のある暮らしをもたらします。

伝統的な日本家屋には、さりげなく粋な計らいが施されています。
例えば格子。外部と内部の境を曖昧に設け、拡がりを遮断しない。しかしながら、プライベート空間はしっかり確保する。これは、格子独特の視覚効果（外からは見えにくいのに、内からは見通せる）によるものです。先人たちは、この格子によって、ちょっとした遊び心とその家の個性を実現したのです。
私たちは、そんな粋な計らいを受け継ぎたいと考えました。井桁の格子をモチーフにした下地窓をモチーフにした丸窓、最新の技術により腐らない木で演出する格子等。
これらは、粋で豊かな住まい手の心をさりげなく実現してくれます。

関東地方は、夏は気温・湿度が高く、冬は乾燥という世界でも稀にみる特異な気候です。
私たちはこの地域にこだわり続けているからこそ、この地域の空気に合った、住宅に落ち着きと和みをもたらす色を、「和の色彩」の外壁として提案しています。
また、色遣いは内部空間においても重要です。空間演出には、高さや奥行き感を強調する色彩の魔法が有効です。
メリハリのある空間演出を効果的に創り出すために、例えば床は明るく柔らかい色彩、天井は部分的に暗く深みのある色彩を使って天井高を強調する。
そんなメリハリを感じる仕掛けが、暮らしを楽しく和ませる演出をしてくれます。

自然本来が持つエネルギーと恩恵を取り込む家造り。
それらを実現する自然素材とは、どのようなものがあるでしょうか？

「木」

自然素材の代表ともいえる木。家を支える構造材ではなく、内装仕上げにも活躍する多才な素材。

「草」

畳のい草に代表される柔らかな肌触りと穏やかな香りが和みを与えてくれる素材。（竹もこの仲間です）

「紙」

障子紙のように光を穏やかにしてくれ、洒落たデザインも楽しめる小粋な素材。

「土」

塗り壁や漆喰に代表される、調湿機能や効用効果を併せ持つ、優れた素材。

「石」

庭石のようにさりげないアクセントとして活躍する素材

これらは、伝統的に日本家屋では当たり前に使われてきた素材たちです。これらの素材たちを適材適所に配置し、コーディネートしていく。
そこから、日々の暮らしに落ち着きと潤いがもたらされ、「和み」のある暮らしが実現します。